TOPIC KUNISHIMA TRAD 01 2021.01.22 UP

KUNISHIMAトラッド

トラッドとは、現代を知り、
未来を切り開くための武器。

TRADITIONAL(トラディショナル)。「伝統的」を意味するこの言葉の意味合いは、
階級のない日本社会に伝わると、TRAD=トラッドという略語に置き換わり、独自の進化を遂げてきました。
そして2021年、国島はあえてこのTRADという和製英語にこだわり、
「クニシマトラッド」というキーワードのもとに、新たな進化を目指します。
私たち日本人が生きるために必要な装いや生地とは、いったいどんなものなのだろう?
そして、そこから生まれた生地は、果たして世界に通用するのだろうか?
この連載では、そんなことを探っていきたいと思います。
第一回は弊社社長・伊藤核太郎が「トラッド」に込めた想いをご一読ください。

TRADITIONAL(トラディショナル)。
「伝統的」を意味するこの言葉の意味合いは、
階級のない日本社会に伝わると、
TRAD=トラッドという略語に置き換わり、
独自の進化を遂げてきました。
そして2021年、国島はあえてこの
TRADという和製英語にこだわり、
「クニシマトラッド」というキーワードのもとに、
新たな進化を目指します。
私たち日本人が生きるために
必要な装いや生地とは、
いったいどんなものなのだろう?
そして、そこから生まれた生地は、
果たして世界に通用するのだろうか?
この連載では、そんなことを
探っていきたいと思います。
第一回は弊社社長・伊藤核太郎が
「トラッド」に込めた想いをご一読ください。

クニシマトラッド 写真1

 人間が外に出て他人と関係をもつときに、自分の気持ちや姿勢を伝えるためには、それなりのコミュニケーションのスキルが必要になります。その大切な手段として生まれたのがマナーであり、それが蓄積することによって、装いも含めたトラディショナルというカルチャーが確立されたのです。
 近年、世の中には様々なカウンターカルチャーが生まれていますが、新しい価値観はどんどん認めていいと思っています。しかし多様な文化が乱立する社会は、複雑すぎてついていけないという人も多いのではないでしょうか? そういう人でも、トラディショナルを知ることで、新しい価値観のルーツや意味を知ることができます。ファッションにおいても、新しく生まれたスタイルやアイテムの意味がいっそう理解しやすくなるのではないでしょうか? トラディショナル=トラッドとは、現代社会を生き抜くためのひとつの基準だと思うのです。

 そういう観点でいうと、弊社は「トラッドな生地」をやっていますよ、と胸を張って言えますが、それは何かというと、圧倒的に高密度な、ハリのある生地です。どんなに効率が悪くても、「国島」の原点である、ちゃんとした生地をつくろうという意識をもってものづくりをしています。ただそれは、昔のものがよかったというノスタルジーではありません。むしろ次世代に向けて進化する生地を目指した結果なのです。高密度生地のリスクである糸切れをなくし、傷のない生地をつくりたい。そのためには新しいテクノロジーも取り入れ、効率を高めていきます。

クニシマトラッド 写真2

 ここ数年、愛着の持てる原料で生地をつくりたいな、という思いが募り、日本中の羊農家さんを見学する機会に恵まれてきました。そしてわかったのが、羊という生き物の大きな可能性です。羊の牧畜は紀元前9000〜7000年くらいからすでに始まっていたと言われていますが、肉も、毛も、皮も、捨てるところが存在しない羊は、人間社会と共栄可能な極めてサステナブルな生き物なのです。しかし日本では、その可能性が十分に評価されているとは言い難い状況で、羊毛もほとんど活用されていませんでした。

 そこでわれわれは、そんな状況を変革するために、日本の羊毛と日本の工場にこだわったウール製品をつくる「ジャパン ウール プロジェクト」を発足しました。“J Shepherds”というブランドも立ち上げました。そして日本の羊毛の魅力を生かした、弊社ならではの高密度なツイードを織り上げたのです。徹底的に昔ながらの風合いにこだわった、私たちのトラディショナルな生地を通して、日本の牧羊業の未来が拓けることを願っています。

Interview, Text, Photo : Eisuke Yamashita